紺野愼一先生からのごあいさつ

 私は、1984(昭和59)年に自治医科大学を卒業し、その後、1986(昭和61)年から1993(平成5)年まで、主に福島県立田島病院(現福島県立南会津病院)の整形外科に勤務しました。この間、当時県立田島病院の院長であった菊地臣一先生から直接指導していただきました。実は、県立田島病院での勤務初日の外来患者さんはたったの5人で、入院患者さんも5人しかいませんでした。それが3ヶ月後には菊地先生の評判を聞きつけた200人以上の患者さんで外来があふれかえるようになり、病棟も満床となりました。その結果、毎年構造的赤字病院のレッテルを貼られていた県立田島病院は、年間1億円の黒字病院へと大変身しました。まさにYou can change !の実践でした。この病院の劇的な変化は、私に大きな影響を与えてくれました。すわなち、不可能だとあきらめずに、まず実行すること、そして、努力すれば報われるということを学びました。

 1993(平成5)年には、スウェーデンのヨーテボリ大学整形外科に椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄の基礎的研究を目的に1年間留学させていただきました。私の指導者のRydevik先生とOlmarker先生は、大変優秀な医師であるばかりでなく、高潔な人格者でもあり、ヨーテボリ大学との交流は現在も継続しています。Olmarker先生は、私が福島に戻るのと同時に福島を家族連れで訪れ、4ヶ月間福島市に滞在していただき、私の福島での実験が軌道に乗るようにサポートしてくれましたので、スウェーデンで学んだノウハウをスムーズに福島の実験室へ導入することができました。

 1994(平成6)年には、福島県立医科大学医学部整形外科学講座に助手として入局させていただきました。入局後は脊椎クリニックを担当し、脊椎・脊髄外科医としての専門性を高めました。1996(平成8)年からは、当時臨床的に実用化されたばかりの脊椎内視鏡手術に着手し、脊髄砂時計腫や脊椎破裂骨折を内視鏡で手術することに成功しました。現在、あらゆる脊椎・脊髄手術を指導的立場で行い、その手技を医局員へ伝えています。対外的には脊椎内視鏡の手術手技を日本全国に普及すべく、1998(平成10)年から年2回、脊椎外科医を対象に脊椎内視鏡手術手技講習会で講師を務め、2000(平成12)年には第4回日本脊椎内視鏡研究会(現日本内視鏡低侵襲脊椎外科学会)の会長の任を全うしました。

 

 ここで、福島県立医科大学医学部整形外科学講座が果たすべき3つの役割である教育、研究、そして診療について、私の考えを述べさせていただきます。

 

 教育は、言葉ではなく、行動で示すことが重要だと考えています。医学生教育に関しては、学生と可能な限り時間を共有し、彼らの本音を聞き出したいと思います。また、患者さんから信頼されるような医師に必要なノウハウをできるだけ正確に伝えるように努力をすることが、医学生の教育には最も重要だと考えています。優れた臨床医の育成には、研究心のみならず患者さんを深く思いやる心の教育も必要です。同時に契約の医療を行うためには、リスク認知能力とコミュニケーション能力も要求されます。自分自身の行動を学生に示すことにより、患者さんに信頼されることの重要性を示したいと考えています。卒後教育に関しては、単に整形外科の視点のみではなく、多面的に患者さんを評価できる医師の育成を目指したいと考えています。治療方法に関しては、画一的ではなく、各個人の心理社会的因子を考慮したオーダーメイドの治療を提供できる医師を育てたいと思います。

 

 研究に関しては、これまで国内外の研究機関と行ってきた共同研究の中で得られた多くの人脈を生かして、今までの研究を更に発展させていきたいと考えています。現在の主な研究テーマは、functional MRIによる腰痛の視覚化、心身医療科教授の丹羽真一先生と共同での整形外科領域における身体表現性障害の診断サポートツールの開発、小皮切による低侵襲脊椎手術の開発、そして南会津郡の全住民を対象とした運動器コホート研究などです。今後、日本の整形外科、そして福島県立医科大学が今以上に国際的に評価されるためには、2つのkey wordがあると考えています。一つは、大学の垣根を越えた大規模な共同臨床研究の実施です。もう一つは、臨床から出た様々な疑問に対して基礎研究を行い、それを臨床へ還元することです。これからは、今まで以上に解剖、生理、薬理、病理、疫学等の最先端の基礎医学系研究グループとの連携を密にして、共同研究を推進したいと考えています。

 

 診療では、初心を忘れず「自らを律して患者さんの満足向上を目指す」を実践していきたいと考えています。痛みや機能障害のみにとらわれず、患者さんのQOLを重視した科学とアートの融合による診療が目標です。県立田島病院で経験した「独りでの診療」を行う厳しさと大切さを今後の診療に生かしたいと考えています。独りで診療することによって初めて気づかされたことがあります。それは、情報の共有化が診療を効率よく行う上でいかに重要かということです。患者さんへの診療内容の正確な情報提供のみならず、医療チームとの密接な連携に基づく情報の共有は、多忙な診療の中で、医療の質の維持、医療事故の防止、そして医療提供側と医療を受ける側の信頼関係の確立に極めて大切です。また、私が大学で菊地先生から学んだことに、医療を実践する上での重要な理念があります。それは、時間を守る、挨拶をする、服装を整えるの3点です。さらには、回診を早朝、日中、消灯前の1日3回以上行う、行った検査の結果は、患者さんに即説明する等のきわめて単純なことです。しかし、これらを完璧に毎日実行するのは、やはり個人の自覚が必要です。私はこれらの理念を忠実に継承したいと考えています。

 

 最後に、講座の運営は、「自らを律し信頼関係を構築する」を基本理念に据えて行いたいと思います。今までの多くの貴重な人脈を大切にして、さらにその人脈を拡大すること、そして患者さんの「痛み」を理解して対応できる医師の育成を目指して、講座の運営を行っていきたいと思います。今後ともご支援のほど、よろしくお願いいたします。

 

福島県立医科大学医学部整形外科学講座

教授 紺野愼一

(2009(平成21)年福島県立医科大学医学部整形外科同門会誌より加筆して転載)

 

update    2017年11月13日  10:43

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