骨軟部腫瘍に対するPET/MRI

 日本で初めてのPET/MRI一体型装置は、福島県立医科大学附属病院に2013年2月に導入され、3月から稼動しました。導入当初は、自費診療として行われていましたが、2013年4月からは保険診療として実施できるようになりました。

 

 整形外科で診療している悪性の骨軟部腫瘍は、一般に糖の代謝が亢進しているため、ブドウ糖類似物質であるフルオロデオキシグルコース(FDG)を陽電子放射性同位元素であるフッ素-18(18F)で標識した18F-FDGを投与すると、悪性の骨軟部腫瘍内部に18F-FDGが集まります。この腫瘍に集まった18F-FDGが発生する放射線を画像化したのが陽電子放射断層撮影(PET)です。FDGを使ったPET装置は、これまで単独のPET装置として、あるいはコンピューターX線断層撮影装置(CT)と組み合わせたPET/CT一体型装置として国内の医療施設に普及してきました。

 

 福島県立医科大学附属病院に日本で初めて導入されたPET/MRI一体型装置は、PETとMRIを同時に撮像することが可能な装置です。PET/MRI検査の利点は、MRIがCTに比べて脂肪や筋肉などの軟部組織のコントラスト分解能が高いことから、PET/CTよりも微細な病変を捉えることができることです。悪性骨軟部腫瘍の進行度を捉えるための病期診断において、MRIの髙いコントラスト分解能により、PET/CTよりも腫瘍の拡がっている範囲をより正確に捉えられることや、肝転移や骨転移などの一部の転移病巣については、PET/CTよりも診断能力が高いことが報告されています。これは、骨転移をすることが多い悪性の骨軟部腫瘍に対する検査として、診断的な価値が高いことを意味しています。また、これまでのPETやPET/CTでは、腫瘍が良性か悪性かを判別するのが難しい場合もありましたが、福島県立医科大学附属病院に導入された高磁場(3テスラ)MRIを用いたMRスペクトロスコピーという検査を行うことによって、良性と悪性を判別するのに有用とする報告もあります。

 

 当科では、2013年6月から骨軟部腫瘍に対するPET/MRIを以下の目的で実施しています。

  1. 治療開始前の病期診断
  2. 補助療法として手術前に放射線療法や化学療法を行った後、手術を実施する前に行う病期診断
  3. 転移・再発を疑わせる所見があるが、他の画像検査では転移・再発を確定できない場合
  4. 手術や放射線療法後の変形や瘢痕などによって、他の画像検査では再発を確認出来ない場合
  5. 手術を行わずに放射線療法や化学療法を行った場合、経過観察などから治療が有効と考えられるが、腫瘤が残存しており、それが腫瘍の残存によるものなのか、肉芽や線維組織など非腫瘍組織によるものなのかを鑑別する場合

 PET/MRIの検査費用は、PET/CTと同額で3割負担の場合28,130円と高額ではありますが、PET/MRIでは全身(頭(脳の中)から手足の指先末端まで)を1回の検査で見ることができます。

 一方、悪性骨軟部腫瘍の病期診断のために一般に行われる従来の検査を行う場合には、以下のような検査を組み合わせて行います。

①腫瘍部の造影MRI:3割負担の場合約16,000円

(①'脳転移が疑われる場合には、別に脳の造影MRI:3割負担の場合約16,000円)

②肺をはじめとする内臓やリンパ節に転移していないかどうか調べるための全身造影CT:3割負担の場合約14,000円

③骨に転移していないかどうか調べるための核医学検査(骨シンチ):3割負担の場合約17,000円

④腫瘍の病勢を判断したり、あるいは治療後に腫瘍が再発したり、転移していないかどうか調べるための核医学検査(腫瘍(タリウム)シンチ):3割負担の場合約15,000円

以上の検査にかかる費用を合計すると、6万円以上かかります。

しかも、全身CT、骨シンチ、腫瘍(タリウム)シンチは、それぞれが放射線を使った検査ですので、PET/MRI1回に比べると放射線被曝量も多くなります。また、これらの検査は1日では実施できないため、複数の日に分割せざるを得ず、患者さんには検査の度に何回も病院に来ていただかなければなりません。

 

 PET-MRIは、腫瘍部や脳のMRI、全身CT、骨シンチ、腫瘍(タリウム)シンチといった複数の検査が必要だった情報を1回の検査で得ることができますので、検査に要する期間を短くすることができ、通院頻度と放射線の被曝量を少なくすることによって、患者さんの体の負担を軽減させることができます。また、検査費用を安く抑えることができます。

 

参考文献

 1. 日本核医学会, FDG PET/MRI診療ガイドライン2012 Ver 1.0. http://www.jsnm.org/japanese/12-11-27

update    2017年9月22日  12:15

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