頚椎症性脊髄症に対する頚椎椎弓骨切り(選択的除圧)術

 頚椎の加齢性変化を基盤として発症する頚椎症性脊髄症は、頚椎の脊柱管内で頚部脊髄(頚髄)が圧迫を受けることによって発症します。通常は、慢性に経過し、経年的に徐々に症状が悪化することが多く、手術療法が選択されます。

 頚椎症性脊髄症では、頚髄の圧迫は椎間板の高さで生じており、前方からは隆起した椎間板によって、後方からは肥厚した黄色靭帯と頚椎椎弓の頭側先端部の間ではさまれたようになっています。そして、頚椎椎体後方と椎弓前方からなる骨性脊柱管の高さでは、頚髄は圧迫されません。頚椎症性脊髄症における以上のような解剖学的研究結果に基づいて、当講座では、従来の脊柱管拡大術に代わり、必要最小限度で圧迫された頚髄の圧迫を後方から取り除くための手術術式である頚椎椎弓骨切り(選択的除圧)術を開発しました。

 

 この手術術式で治療する対象の疾患は、頚椎症性脊髄症黄色靱帯骨化症、あるいは黄色靱帯石灰化症という椎間板の高さで椎間板と黄色靱帯によって脊髄がはさまれるように圧迫されている病態の患者さんになります。頚椎後縦靱帯骨化症は、椎間板の高さだけではなく、椎体の高さでも頚髄が圧迫されているため、従来の脊柱管拡大術を行う必要があります。

 

 手術範囲を決定するには、頚髄が圧迫されて障害されている部位(障害高位)を求める必要があります。一般に、頚椎を後ろに反らせたときに脊柱管が狭くなって頚髄の圧迫が強まるので、くびを伸ばした状態の時と、くびをしばらく後ろに反らせて保った状態の時の神経の異常所見を診察して比較します。さらに、MRIもくびをまっすぐに伸ばしている状態と後ろに反らせた状態との2回撮影します。診察の結果求められた頚髄の障害高位とMRIで認められる頚髄の圧迫部位が一致しているかどうか確認して、手術で頚髄の圧迫を取り除く部位を決めます。

頚椎症性脊髄症の患者さんの手術前後の頚椎MRI
頚椎症性脊髄症の患者さんの手術前後の頚椎MRI

a: 手術前の頚椎中間位MRI

 くびをまっすぐに伸ばしている状態(中間位)では、第5/6頚椎と第6/7頚椎の椎間板の高さ(赤←)で頚髄が前後から圧迫されています。

 

b: 手術前の頚椎伸展位MRI

 くびを後ろに反らせた状態(伸展位)では、第5/6頚椎、第6/7頚椎の他に、さらに頭側の第3/4頚椎、第4/5頚椎椎間板の高さ(黄←)でも頚髄が圧迫されているのが判りました。

 

c: 手術後の頚椎中間位MRI

 手術では、第3/4、4/5、5/6、6/7頚椎椎間の椎弓の一部(白←)を後方から削り取って、黄色靱帯を切り取りました。手術後のMRIでは、頚髄の圧迫が解消しています。

 

手術翌日にはベッドから立ち上がることができ、翌々日には歩行可能となります。

手術後に頚椎部の固定(カラー装用)は、行っていません。

退院は、手術後10日〜14日くらいです。

 

この手術術式の長所としては、従来の脊柱管拡大術と術後成績は同等であり、また、頚椎後方の筋組織へのダメージが少ないため、脊柱管拡大術に比べて手術後の頚部の症状(痛み、重苦しさ、こり、疲労感など)が軽いことです。

update    2017年9月22日  12:15

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