背景と目的
イホスファミドは、アルキル化薬に分類される抗腫瘍薬のひとつである。整形外科で扱う骨軟部肉腫をはじめ、多くの固形腫瘍に対するkey drugのひとつであり、多剤併用療法の中心薬物として広く用いられている。イホスファミドの薬物有害反応のひとつである中枢神経毒性は、「イホスファミド脳症 ifosfamide encepharopathy」と呼ばれ、イホスファミドを投与された患者の10〜30%に合併すると報告されている。イホスファミドの用量規制因子は、イホスファミドが臨床で使用されるようになった1970年代当初、骨髄毒性と腎・尿路系毒性が主であったが、メスナの併用によって腎・尿路系毒性が克服された現在、中枢神経毒性が新たな克服されるべき用量規制因子となった。イホスファミド脳症の徴候は、焦燥感や傾眠などの軽度なものから、痙攀や昏睡などの重篤なものまで様々である。そのほとんどはイホスファミド投与中止後、数日で自然に回復するが、完全に回復せずに記憶障害などの後遺症を生じたという報告や、昏睡後そのまま死亡したという報告もある。脳症の原因物質として血液−脳関門通過性のクロロエチルアミン、クロロアセトアルデヒドなどのイホスファミド代謝産物が疑われているが、その発症機序は未だに不明である。
メチレンブルーは、II型グルタル酸血症の治療薬として用いられてきたが、イホスファミド脳症患者がグルタル酸尿症を生じていたという事例から、イホスファミド脳症患者に投与され、その有効性が1994年に初めて報告された。以後, 複数の追試が海外で行われた結果、現在、メチレンブルーはイホスファミド脳症の治療薬として、臨床に用いられるようになっている。
しかし、国内ではイホスファミド脳症そのものが、まだ広く認識されていないのが現状である。
本研究の目的は、イホスファミド脳症に対するメチレンブルー療法の治療効果および予防効果を明らかにすることである。特に以下の点について検討する。
1. イホスファミド脳症を発症した患者に対して、メチレンブルーを投与することによって、脳症の程度を軽減させたり、脳症の重症化を予防できたり、脳症持続時間が短縮できるかどうか
2. 過去にイホスファミドを投与された際に、脳症を発症したが、イホスファミド以外に有効な抗腫瘍薬がなく、さらにイホスファミドの投与を要する患者に対して、イホスファミドにメチレンブルーを併用投与することによって、イホスファミド脳症を予防できるかどうか
対象の選定
イホスファミドを用いた癌化学療法が行われる骨軟部肉腫患者
研究期間
2005年 1月〜
研究場所
福島県立医科大学附属病院整形外科
主任研究者
田地野崇宏准教授
研究費用
福島県立医科大学附属病院が負担
update 2019年4月11日 11:00
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