基礎研究 / 臨床研究

腰痛の生涯発生率は50~80%であるといわれています。腰痛をきたす疾患の中でも、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄は、代表的な腰椎疾患です。

 当講座では、基礎的研究として、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄を模した動物モデルを用いて、病態解明や治療の標的を研究しています。また、臨床研究では、疫学調査による有病割合、危険因子、疾患の実態等についての調査、機能的脳画像所見による慢性痛の病態解明、慢性腰痛の解明と多面的治療のためのツールの開発、多面的評価に伴う治療の選択や効果などを研究しています。

 腰椎椎間板ヘルニアの有病率は人口の約1%で、 20~40歳に好発します。画像所見での椎間板膨隆は症状と必ずしも直結せず、炎症性サイトカインなどの化学的因子の影響も、疼痛発現の病態と考えられています。私たちは、基礎的研究として、腰椎椎間板ヘルニアを模したラット髄核留置モデルを開発し、疼痛関連行動と化学的因子の関与について検討し、治療標的の候補を研究しています。

 さらに、私たちは、日本国民からの無作為抽出法により抽出された対象者とした集団研究にて、腰部脊柱管狭窄の推定有病者数は、本邦の40歳以上の5.7%に認められることを報告しました。50歳以上に多く、様々な症状を有し、特徴的な症状には、歩行により症状が増悪する神経性間欠跛行があります。基礎的研究により、この症状は神経内血流障害が関与し、神経内の血流の改善により症状が改善することが期待できまることから、プロスタグランジン製剤での血流改善効果について検証しました。これらの結果により、腰部脊柱管狭窄の特に馬尾症状には、プロスタグランジン製剤が選択されるようになりました。腰部脊柱管狭窄は、様々な症状を有すること、日常生活動作により症状が変化することから、腰部脊柱管狭窄の症状スケールとQOLスケールを開発しました。これらのツールを用いることで、治療前後の状態についてのモニタリングとして活用することができ、治療内容は、保存療法と手術療法のどちらにも利用することができます。

 以上は、当講座にて実施した基礎的研究と臨床研究の一部をご紹介しました。基礎的研究と臨床研究の両面から、運動器疾患に伴う慢性疼痛の研究を幅広く継続しています。

 


2015.6.8 at UC San Diego